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6 posts from June 2005

June 29, 2005

たとえば、こんなふうに脚本を書く


   よく晴れた空の下、どこかの川沿いの土手。
   男と女が並んで歩いていく。
女N「それでも地球は回っている」
男N「誰?」
女N「ガリレオ」
男N「鉛筆削りみたいな名前だな、ガリレオ」
女N「なにそれ?(笑う)」
男N「じゃあ‥‥目覚めよ、パリ」
女N「目覚めよ、パリ? 知らない」
男N「映画の最後の台詞」
女N「ずるい、映画じゃん。反則」
   会話続いたまま、アパートの一室。真新しい家具を
   並べていく男と女。二人で暮らしはじめた雰囲気の
   なか、幸せそうな表情。
女N「東京には空がない」
男N「智恵子抄」
女N「よくわかったねえ~」
男N「あっ、バカにしてる?」
女N「えらい、えらい」
男N「巨人軍は永久に不滅です」
女N「それ、答えるまでもなくない?」
男N「有名すぎか」
女N「じゃあこれは? 鷲は舞い降りた」
男N「誰だっけ? 月に降りた人?」
女N「自分で調べてみて」

   夜空に浮かぶ満月。
   街を行き交う人々。ひとり、立ち止まって空を見上げ
   ている男。
男N「月を見るたびに彼女を思い出す。僕も今では知って
 いる。ニール・アームストロング、それが月に降りた人の
 名前だ。月に降り立ったとき、彼にもきっと愛する人がい
 たのだろう。月から見下ろす、この地球のどこかに‥‥」

 ‥‥あっ、止まった。思いつきでここまで書いてみたけど、ここで想像力が停止し
ちゃったもよう。う~む、このあとどうしようかな。月を見上げてる時点で、おそらく前
半部は回想で、この感じだと彼女は死んだか、失われたかしているのだと思われる。
で、彼はいずれ誰かと出会うはず。ボーイ・ミーツ・ガール。それが物語の基本なの
で。脚本を書いたり、読んだことのない人のために説明すると、Nってのはナレーシ
ョンのこと。そして、最後のナレーションはくさいな。直したほうがいいに一票。そもそ
も月に降りたったのがアームストロングって人で正解なのかどうかも不明。はい、脚
本を書くときはちゃんと調べましょう。

 もの書きの人々のなかには、先に構成をきちっと考えてから書く人が多いらしいけ
ど、僕は今みたいにファーストシーンが浮かんでこないと書けない。ファーストシーン
が浮かんできても、そのあとが書けないことも多々ある。そんなわけで、誰だか知ら
ないけど、さっきの男はバカみたいに月を見上げたままだ。お気の毒。ここらでシー
ンを変えて、ヒロイン的な人物を登場させるべきであるような気がする。とりあえず、
月で繋ぐべきだな、ここはたぶん。どうしよう? 考え中、考え中‥‥‥

   夜空に浮かぶ満月。
   その下、高層ビルの窓にいくつもの明かり。
   女がひとり、オフィスでPCに向かっている。
   先に帰っていく同僚に微笑みかけたりして。
女N「‥‥人がはじめて月にたどり着いたとき、そこには
 何もなかった。その広大な大地は月の砂漠と呼ばれた」
  場所は変わってどこかのバー。女は同僚たちと酒を飲
  んでいる。明るく笑ってみせる、その表情。
女N「昔の人々は、人類が月にたどり着く日がくるなんて
 思ってもみなかったと思う。彼らの想像では、月には何
 があったのだろう。決して届かないはずの夢? それと
 も天国?」

   電車の中、扉に体を預けている女。さっきとは変わって
   疲れた表情。
   窓の外では夜の景色が流れていく。
女N「私は29年目の人生にたどり着いた‥‥ここには何も
 ない」

   女のマンション。
   電気を点ける。無駄な物がない簡素な室内。
   女、冷蔵庫を開けて、ミネラルウォーターを飲む。
女N「‥‥私は、月の砂漠を生きている」

 ‥‥この子、暗いな。つうか死にそうだな。大丈夫なの?(いや、書いたの僕だけ
ど)。ついでに言えば、“月の砂漠”ってフレーズは前にこのブログで使ってるし。まあ
いいや。そのへんはリサイクルで。「決して届かないはずの夢?」とかナレーションで
言っていたので、おそらく彼女は叶わない何かを抱えているはず。で、僕はこの暗い
彼女と、バカみたいに月を見上げていた男を出会わせなければならないわけだ。でき
れば劇的に。あるいは、すげえさりげなく。どうやって? 知ったことか(あっ、投げ出
した)。こんなふうにして、僕のPCの中には中途半端に止まったままの物語が増えて
いくのである。そんなデアル調。

 時刻は深夜3時。まあ、僕はこんなことをいつも考えているわけです。この部屋で、
街を歩きながら、下手すると仕事中にも。ときどき思う、ものを書きたがる人って空想
狂なのではないかと。たぶん、世の中には映画や芝居が好きだけど、まだ一度も自
分で書いてみたことがない人がたくさんいるはずだ。はい、試しに書いてみてくださ
い。書いてみたら僕よりよっぽど才能があったりする可能性も多々あり。どいつもこい
つも空想狂の方向で。空想狂時代。チャップリン。噂によれば、誰だってひとつは物
語を書けるらしいですよ。自分の経験とかそういうので。それでは、素敵な物語の誕
生を期待しつつ。

 う~ん、どうやってこの二人を出会わせようかなあ‥‥。(えっ、続き書くの?)


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June 27, 2005

んじゃあ僕も、ミュージカルバトン


 エレキベースの亀田プロからバトンが回ってきた。僕は普段、この手の企画モノ
には乗らないんだけど、亀田プロから回ってきたし、暇つぶしにやってみようという
ことで。え~と、説明あったほうがいい? いらない? いる? そうなんだ、じゃあ
亀田プロのブログからのそのままパクって貼ろう。

説明:「バトンが回ってきたら自分のウェブログでいくつかの音楽に関する質問に
回答して、その質問をさらに自分から5人に繋いでいくネット遊びだそうです。アメ
リカの音楽好きブロガーから始まったらしい」

 そうらしい。どいつもこいつも音楽が好きらしい。そいつは素敵。んじゃあ、サクッ
とはじめてみよう(またパクる)。

■今コンピュータに入ってる音楽ファイルの容量

 え~とね、知らない。適度に入ってるっぽい。正直なところ調べるの面倒くさい。

■今、聴いている曲

 クリムゾン通りを南に抜けた先で
 くさる寸前のブライトン・ピーチかじる
 黒く潰れた種 吐き出して
 ここから咲く花の色を考える
 ラプソディー ラプソディー
 ラプソディー ラプソディー

 世界にギターをかき鳴らせ的なもの。ミッシェルで「ラプソディー」。HDDプレイヤー
 を購入してからというもの、毎日一度はミッシェルを聴いている。そしてミッシェル
 は基本、曲のタイトルをサビで連呼する。そんなわけで、僕も街を歩きながら曲
 のタイトルを口ずさまなければならなくなる。

■ 最後に買ったCD

 R.E.M.の「Around The Sun」か、くるりの「BIRTHDAY」のどっちか。

■よく聞く、または特別な思い入れのある5曲

 歌っておくれよ ピアノ・マン
 今宵 歌っておくれ あの歌を
 俺たち全員 歌い出したい気分なのさ
 ああ 今夜はなんて素敵な夜だろう

 まずは、ビリージョエルで「ピアノ・マン」。おそらく僕はこの歌で洋楽に入った。
 今でもときどき思い出したように聴くので、小6からずっと聴いていることになる。
 
 GUNS N'ROSES「KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR」

 説明不要。映画のなかで、街の通りで、どこかの店で。こいつを聴いちまったばっ
 かりに僕は彼女を思い出す。ちなみ本家のボブ・ディランの方でも同じく思い出す。

 EMF「Unbelievable」

 はい、EMFです。昔そんな若者たちがいました。英国に旅行へ行ったとき、ライブ
 ハウスでEMFを観て、「Unbelievable」が始まった途端に英国人がやたらと前に押
 し寄せ、ひとり日本代表の僕に対してビールの缶とか煙草の吸殻とかFではじまる
 言語とかを浴びせはじめた。大歓迎ってわけかい? 光栄だね。ある意味では忘れ
 られない記憶。けっこう怖かったから(いや、マジでね)。


 戸惑い纏って飛んだ 鮮やかな蝶を 独り
 静かに見つめてた 悲しみを連れて
 出口無くして 森の入口
 絡み付く寂しさで 格好つかないで迷っていたよ
 束ねた譜面を開き 不慣れな手つきで
 奏でたピアノから 聞こえてくるのは
 呼び止める声 出掛けの「さよなら」
 かけてゆく 月の夜 変わりゆく数字 見つめる君に
 火をつけて 森の中 飛べなくなる蝶 見つめて酔いしれていようか

 東京スカパラダイス・オーケストラで「美しく燃える森」。民生が歌ってたやつ。スカ
 パラにはあんまり興味ないけど、この歌だけは妙に好きだ。前の恋人と出会った
 頃によく聴いてた。そのせいなのかもしれない。いま聴いてもいいね、これ。今回
 の更新が終わった後、僕はこの曲をHDDプレイヤーに落とすはず。


 魂を売る必要はないんだ
 彼はすでに僕の中にいるんだから
 魂を売らなくたっていいんだ
 彼はとっくに僕の中にいるから

 憧れられたい
 崇拝されたい

  リアルタイムでローゼズの「憧れられたい」を聴いたときはけっこう衝撃だったわ
 けで、レニだかマニだかのベースの音が遠くから聴こえてきただけでゾクゾクした
 のを覚えている(わかる人だけわかって)。僕は当時、ギターも弾けやしないのに
 やたらとジョン・スクワァイアのギターっぷりに憧れていた。これ、まさに死ぬほど
 聴いた曲だね。

■この人に紹介

 ん~と、未定(えっ?)。僕の知り合いはブログがある人あんまりいないし、つい
 でに音楽が好きでブログがある人は皆無に等しい。そんなわけで亀田プロにお
 返しします(また?)。え~、takさん、これ見てたらバトンを受け取ってください。
 いや、メールで頼めって話ですが。


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June 25, 2005

夏の気配と寂しさと


 なんだかめまぐるしい日々だ。あれが終わったと思えば、これがはじまるというか。
職場ではちょっとした重大発表があり、それを聞いた人々はそれぞれの感慨を抱き、
漠然とこれから先のことを考えはじめている。「いい機会のような気がする」とか「ちょ
うどいいから現状を見つめなおしてみる」という声も聞こえた。そんな中、イガラシさん
37歳からは「そろそろ朗報を届けられるかも」といった感じのメールが送られてきた。
僕は僕で、しばらく停滞していた売り込みをしてみたりしている。今度は少しマトモな
雑誌でライターでもしてみたいなと。季節は春から夏へ移行しようとしていて、梅雨と
呼べるほど雨も降らず、空気はただ蒸し暑い。時計の秒針は常に右回りで、月日は
確実に暦を前へと刻みつづけている。変化の時がやってきているのかもしれない。
当然のことではあるけれど、いつまでもみんなで楽しくってわけにはいかないわけ
だ。寂しいね。

 波風のない日々は退屈だけど、そうであったほうがいいこともある。僕は日常の調
和を保つために、人の話を聞いたり、黙って見守ったり、起こらないほうが望ましいこ
とを未然に防ごうとしたりしている。一年くらい前は最高に辞めたいと思っていたけど、
なんだかんだ言って今ではそれなりにこの職場が好きなんだってことに気づいた。仕
事そのものではなく、自分を取り囲む人々が。僕らは業務という時間を通して、さまざ
まなことを共有している。そこには叶わない夢があり、いくつもの悩みがあり、苛立ち
とうんざり感があれば、くだらない笑いがある。若者がいて、もう若くないヤツらがいる。
ほんとに悪くない人々だ。ありがたいことに人々は適度に僕を気に入ってくれている。
僕は今年で32歳になった。ときどき、自分の人生において、こうした関係っていうもの
はいずれ失われていくんだろうなと思ったりもする。

 そもそも、20代前半の僕の人生的ヴィジョンでは、この年齢になったらもの書きで
食えてるはずだった。予定外とはこのことだって話。そんなわけで、言ってみれば僕
はいま予定外の人生を送ってるわけだ。今日も、明日も。まあ予定通りの人生って
のも、それはそれで刺激に欠けたりするのかもしれないけど。もし予定通りの人生
を歩んでいたら、僕が今まで出会ってきた人たちの半分くらいは違う顔ぶれだったり
するんだろう。劇団に入って、役者の方々と親しくなることもなかったはずだ。不思
議だな、こういうのって。ほとんど偶然だから。僕がこれまで出会ってきた人たちは
ほとんどバイト先の人々。それは、ちょうどその時期にそこで働いていたとか、ちょう
ど職を探してたとか、その日ちょうど求人誌を買ったとか、ついでにちょうど同じ職場
で採用されたとか、そんな偶然が重なってるわけだ。うん、人ってのは新たな環境
で当然のように出会ってるけど、じつはけっこう低い確率で偶然に出会ってることに
なる。

「人生の楽しみってなんだと思いますか?」と人に聞かれたとき、僕はたいてい「人
と出会うことかな?」と答える。それしか思いつかないから。実際、僕はこれまでいろ
んな人に刺激を受けてきたし、いろんな人から多くのことを学んだ。結果的に僕にも
のを書くきっかけを与えてくれた女の子がいて、映画のおもしろさを教えてくれた人
がいて、勇敢に生きる見本を見せてくれた人がいた。で、今の僕があるわけだ。振り
返ってみれば、けっこうな数の良き人々に出会い、僕は恵まれているような気がする。
こんなふうにも思う。どうせなら、僕も今まで出会ってきた人々になんらかのいい影響
を与えることができていればなと。

 そして、今の職場も振り返ってみればそんなふうに思うんだろう。いつまでもこのま
まではいられない。だから、今はここしばらく月日を楽しみたいね。夏が嫌いな僕では
あるけれど、がんばって表に出るよ。あとから思い返したとき、「7月はすげえ楽しんだ
なあ」って思えるくらい。楽しみ過ぎて、夏が過ぎ去った後には寂しさが残るくらいにさ。
みんながこの先どこへ向かうのかはわからないけど、今はまだとりあえず楽しもうよ。
悲しいことは忘れて、バカみたいに大笑いして、「おまえらうるせえよ」ってくらい騒いで。
いつか、悪くない夏だったと思い返せるように。

 人生にはいろいろありますが、みなさんそれぞれの夏を楽しみましょう。夏の記憶は
音楽とともに。最後は例によってサニーデイで、「空飛ぶサーカス」。

 
 夏枯れどき 梅雨晴れの空
 飛行機の音が遠くから聞こえて
 左手に雨 右手に太陽
 真っ赤なジャケット放り投げて行くのさ
 
 太陽が走っていく ねえドライブでもしようよ
 僕らの人生って 空飛ぶサーカスみたいだね

 軒下でちょっとたたずんだ午後
 ラジオの音がどこからか聞こえて
 あれは何の歌?
 退屈な午後
 真っ赤なリンゴほおばって歩こう

 太陽が走っていく ねえドライブでもしようよ
 僕らの人生って 空飛ぶサーカスみたいだね
 

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June 14, 2005

梅雨、恋が降る季節に


 ねえ 世界がもう目の前にあるような
 そんな夜ってないかい?
 もう 何もかもが飽きてしまってもまだ
 終わらない夢のよう

 ひとりサニーデイ・ブーム到来。一曲目はとりあえず「夜のメロディ」で。時刻は深夜
3時。実際のところ今、世界が目の前にあるような気はしてないけど。相変わらずの
夜。見慣れた部屋と、煙草のけむりと、好きな音楽と。
 巷は恋の季節のようで、フクダくんをはじめ、周りの方々はやたら僕に恋愛的な話
題を提供してくれる。そのたびに僕は、恋というものについて考えさせられるわけだ。
まあ恋愛ってのは難しいよね。必ずしも想いが強い者が勝つわけでもなく。そうだっ
たら、みんなもっと楽なんだろうな。フェアな感じもするし。

 例えばわかりやすいところで、僕の歴史的な失恋。おそらく彼女の個人史において
も、最も深く彼女に恋をしたのは僕だ。これは僕の勝手な思い込みのような気がしな
いでもないけど、「彼女を愛した男ランキング」で言えば、僕はかなりいいセンいって
いたはずだ。が、それでもいま、僕の元に彼女はいない。そう、恋愛ってのは、想い
の強い者が相手を得られるわけではないから。相手の気持ちがあってはじめて成立
する。その昔、僕がどれだけ想っていても、彼女の答えが「私は結婚して関西に行き
ます」であれば、それが正しい答えというわけだ。誤解のないように言っておくと、僕
はまだ彼女を得たいと思ってるわけじゃない。あくまでも例えとして。

 君とどこか遠くへ もっと遠いどこかへ
 ふたりだけで今日は過ごすよ
 貨物列車に乗っていこう きっともう戻れない

 二曲目もサニーデイで、「スロウライダー」。うん、そんなわけで恋愛ってのは厄介だ
よね。おそらく僕に恋愛話を聞かせてくれたヤツらは、暇さえあれば相手を想っていた
んだろう。一日のはじまりに目覚めて彼女を思い浮かべ、一日の終わり、眠りに落ち
ていく淡い意識のなかで彼女を想う。ほかのことが手に付かなくなって、すべての景
色に彼女が入り込んでくる。それをどうにも止めることができない。きっとそんな感じ
だ。これ、経験あるね。ある日、突然それが許されなくなる。いや、許されなくはない
けど、そうしていてもどこにもたどり着けないことを知る。どうする? 心に穴が開く。あ
る者はそれをほかの何かで埋めようと努力し、ある者はそれをまた彼女の記憶で埋
めようとする。

 魔法をかけたよ さっき君に
 気づかなかっただろう 瞬きの瞬間だった
 炎を囲んだ夏の終わり 真夜中の海は静けさの色

 三曲目もまだまだサニーデイで、「魔法」。魔法ね、そりゃかかればいいけどね。
相手にも感情ってものがある。同じように人に恋をするし、きっと同じように思い悩ん
でいる。だから、うまくいかなかったからといって相手が悪いわけじゃない。これはも
う巡り合わせとか好みの問題だ。出会った時期が早かったとか遅かったとか。どれ
だけがんばってもその絵を芸術対象として捉えられないとか。べつに嫌いな絵じゃな
いし、街に貼ってあるのであれば構わないけど、自分の部屋には飾れないってこと
もある。嫌いな絵ならむしろ楽。捨てちまえばいいんだから。普通に嫌いじゃない絵
の方がむしろ困る。捨てることも飾ることもできない。だから悩む。どうする? ある
者はできるだけ傷つけないようにする。ある者は傷つけてでもはっきり諦めさせよう
とする。おそらく、それはどちらも優しさだ。

 水たまり走る車に乗って 
 恋人さらってどこかへ行きたい
 雨上がりの街 鈍い光浴びて
 虹に追われてどこかへ行きたいんです

 四曲目もこれでもかってくらいサニーデイで、「さよなら! 街の恋人たち」。ひとつ
言えることは、うまくいかなかったからといって世界は終わらない。人は学ぶし、人は
回復する。そのへんはかつて歴史的失恋をした僕が保証しよう。もう誰も好きになれ
ないと思うかもしれないが、そんなことはないね。なぜなら人は人を好きになる生きも
のだし、いくつになっても男から見れば女性ってのは素敵だから。まあたぶん、どんな
かたちでどんな結果であれ、恋ってのはいいものだよ。このブログを見てくれている
結婚しているみなさんは、「そういうのあったねえ。懐かしいよね」と思っているかもし
れない。ついでにこうも思ってるかもしれない。「そうそう、恋っていいよね」と。

 僕がこうして書いてるあいだにも時間は過ぎ去り、時刻は深夜だか早朝の4時。あ
とは時が流れるのを待ちましょうということで。おかげで僕までなんだか恋愛的な気
分になったね。そんなこんなで最後の曲もサニーデイ。ブログタイトルにふさわしく、
「夢見るようなくちびるに」。


 きみの声のする方へ きみの香りのする方へ
 きみの瞳のそっと輝く方へ

 夢見るようなくちびるに色をつけてみるんだ
 だれもいない場所で


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June 10, 2005

旅情なき日々


 旅情=旅先でしみじみと思い巡らすこと

 僕は旅情を知らない。そもそも生まれてこのかた、旅に出たことが数えるくらいし
かない。以前、「世界の車窓から」という5分くらいのテレビ番組で旅情らしきものを
抱いた覚えがあるけど、たぶんそれは錯覚。なぜなら余裕で部屋の中だったから。
わかりやすく言えば、今いるココで見ていた。ブラウン管から望む異国の景色は、
それはそれで美しかったけど。
 旅情、素敵な響きだ。見知らぬ街の風景に触れて何かを思い、ときには誰かを想
ってみたりするんだろう。そこにある不在。いないからこそ、頭から離れないその姿。
消せない記憶。白い首筋を際立たせる黒髪を思い返す。あの日、君が言おうとした
言葉。その他いろいろ。

 ひとり旅をしてみたいと思っていた。一泊でもいいから。そのために四連休を取っ
てみたが、僕は恐ろしいほど旅行スキルが低かった。ネットで行き先を決めようとす
るだけでうんざりする。自分がどこに行きたいのかさっぱりわからない。そうこうする
うちに休日がやってきてしまい、あとにはこれといって用のない四連休だけが残った。
仕方ない、旅行は来月にしよう。それまでは見慣れたこの世界で思いを巡らせれば
いい。しみじみと。

 とりあえず恵比寿へ、ウディ・アレンの新作を観にいく。ガーデン・プレイスって相変
わらず箱庭的な景観だ。世の中にはこうした作り物の空間が多い。亀戸のサンスト
リートとか(知ってる?)。情緒に欠ける場所ではあったけど、人々は昼下がりを楽し
み、広場ではいくつかのコミュニティが形成されているようだった。若者たちは階段
に座り込んで食事をしていた。見たところ服飾系の学生たち。オシャレだな、みんな。
よくわからないけど、いずれファッション業界に新風を巻き起こしてくれたまえ。どうせ
やるなら、夢は大きくってね。

 映画まで時間があったので、マックでコーラとフィレオフィッシュを買って、僕も景色
に同化する。学生には見えないだろうけど、まあそのへんは気にしない方向で。買っ
たばかりHDDプレイヤーをフル活用しつつ、ベンチに腰かけて食事。見上げれば、い
ちょうの葉が風に靡いていた。群れからはぐれた鳩が一羽だけ、広場の上空を旋回
していた。ビルの外壁を上下する窓拭きのゴンドラ。視線を地上に戻すと、広場の中
央では小さな女の子がアドリブだと思われるステップを披露していた。それぞれの午
後。BGMは久しぶりにサニーデイ・サービス。いいよね、サニーデイ。狙い済ましたよ
うにちょっと古臭い感じが。

  OH BABY そのあとにふたりでちょっとお茶をしよう
  一度行ったことのある喫茶店に もういちどだけ
  なんにもなかったかのように秘密の話でもしよう
 
  胸いっぱいの思い出を 抱えたその両手に傷
  こぼれる涙が物語のはじまり
  夏には咲き誇り 冬には枯れてしまう恋
  昨日と今日と明日を駆ける旅のできごと

 なんだか映画を観ないでこのまま音楽を聴いていたい気分だったが、僕はすでに
チケットを購入してしまっていた。そんなわけで劇場の中へ。びっくりするくらい空い
ていた。アレン、大丈夫なのかい? 君の映画って昔はもっと人気だったような気が。
予告編を眺める。ふ~ん、エミール・クストリッツァの新作もやるんだ。観たいな、これ。
予告編が終わり、映画がはじまる。アレン作品ではすっかりお馴染みになった、黒背
景に白抜きのクレジット。昔ならこれだけでもうわくわくしたんだけどな。アレン、老け
たなあ。完全なる老いぼれだった。退屈ではなかったが、途中で睡魔に襲われ10分
ほど睡眠。なんとか目を覚まして最後まで鑑賞する。‥‥なるほどね、結論を出して
いいかな? アレン、僕は君を最高に敬愛してるし、おそらくこれからも愛し続けるだ
ろうけど、残念ながら君はもう終わってる。悲しいね、こういうの。昔が良すぎたんだ
よ、たぶん。それでも映画を撮り続けてくれ。いつかもう一度、「マンハッタン」みたい
な素晴らしい映画を撮れることを願ってるよ。

 そのあとは、音楽に身を任せて新宿の街をぶらっと散歩。例によってNEWTOPSに
寄ってアイスコーヒーを飲みながら読書をする。いい店だよね、TOPS。老いも若きも
集ってる雰囲気が好きだ。HDDプレイヤーの付属イヤフォンは明らかに音が悪かった
ので、ついでに音の良さそうなイヤフォンを購入して帰宅。
 そんな感じで僕の連休二日目は終了。まあ、悪くない一日だった気がする。旅情
はまるでなかったけど。連休はあと二日。

 余暇は続く。


 追伸
 
 巷は恋の季節らしい。役者に彼に続いて、またもや友人が恋という名の戦場で死ん
だ。昔から僕のサイトを見てくれているみなさんは、もしかしたら彼を覚えているかもし
れない。フクダくん、君のことだ(いま、びっくりしてるくさい)。どいつもこいつも勇敢だ
ね。あんまり落ち込まないように。また今度、向かい合ってコーヒーでも飲もうぜ。悲
しみにやられちまったときには遠慮なく連絡を。居留守気分だったときには、後日折
り返します(えっ?)。そして、ギンさんがこのあとに続かないことを心から祈る。


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June 04, 2005

他人事カウセリングチーム


 昨日は以前の劇団の飲み会にお邪魔した。先日、恋という名の戦場で散った役者の
彼と一緒に。彼はまあまあ元気そうだった。胸に銃弾の跡も見当たらなかった。血の流
れない痛みというわけだ。おそらく内心ではリハビリ中だったりするんだろうけど、表向
きはうまいこと普通な感じを装っていた。梅雨の装い。失恋した人にオススメする6月の
新作コレクション。

 僕と彼がお邪魔することをみなさん知らなかったらしく、僕らはすっかりサプライズゲス
トと化していた。「あれっ、なにしてんの?」とか、顔だけのびっくりリアクションとかで迎
えられる。いや、呼ばれたから来たつもりだったんだけどね。僕に誘いのメールをくれた
人に聞いてみると、「とりあえず勝手に呼んでみました」との返事。そうなんだ、じゃっか
ん気まずいんだけど。知らない人増えてるし。
 とりあえず酒を飲む。劇団の飲み会というと、演劇論やクリエイティブな談義が繰り広
げられると思われるかもしれない。確かに実際そういうときもある。が、たいていはこん
な感じでみんな好き勝手に喋る。

「最近どうなの?」
「どうでもないっすね」
「借金なくなった?」
「この焼きそば、いまいちだな」
「思ったんだけど、1000万にいかないかぎりなんとかなるよね」
「その認識まちがってる」
「赤いカードが赤いうちは気をつけろ」
「はぐれ刑事って、どのへんが純情なの?」
「はぐれてる辺りが」
「俺、借金ゼロ」
「自慢された。当たり前なのに」
「彼女できた?」
「まあ、うまくやってますよ」
「ソロっす」
「ここ、携帯電波悪くない?」
「つうか、俺ふられたし」
「店員を呼ぼう」
「電波なのに?」
「で、彼女って何?」
「言えた、彼女って何?」
「たぶん素敵なもの」
「死ね」
「あのスマップが大好きな女の子とはどうなったんですか?」
「えっ、それ何年前の話?」

 とかそういう感じ。基本的にどうでもいいことを話している人たち発見。予定では真面
目な話をして刺激を受けるつもりだったんだけど、まあこれはこれでおもしろかった。こ
の劇団には、僕より年上で「ふられ王」の称号を得ている人物がいる。その名はギンさ
ん。僕は彼の持っているテイストとか、キャラクターが大好きだ。でも、どういうわけか女
の子には通じないらしい。いつだって恋をしているギンさんに、「いま誰が好きなんです
か?」と聞いてみたところ、「たくさんいるから、自分でもわからない」という返事がかえ
ってくる。いや、ギンさん。その時点でダメだと思う。恋は盲目にもほどがある。

 仕方ないので僕と例の彼でカウセリングを開始する。まず最初の女の子。メールを送
っても6回に1回しか返事がこないらしい。6-1。びっくりするくらい打率低いな。という
より、よく6回も投げたね。ある意味では力投。今後、おそらくフルスイングしても逆転は
ないとのことで、我々カウセリングチームはその子は無理という判断を下す。聞いてい
るうちに、じゃっかん脈がありそうな女の子を見つける。我々カウセリングチームは彼女
を標的にすべきだということで意見が一致した。そして、酒が入り、ついでに言えば他
人事だと思っている我々カウセリングチームは、「彼女を誘いたまえ」とギンさんに命令
を下す。

 ギンさんはちょうど彼女を芝居に誘いたいと思っていたところらしい。が、ギンさん曰く、
メールが下手なので誘えないとのこと。いや、メールに下手とかあるの? 思ったことを
思ったように書けばいいのでは。それしかないし。そんなふうに言ってみたところ、「じゃ
あもの書きとして、duzzちゃん代わりにメールの文面考えて」とか言われる。それは道
徳的にどうなんだろうという疑問はあったが、我々カウセリングチームは酒が入り正常
な判断力をなくしつつあった。そんなわけで、気がつけば僕はギンさんの携帯を片手に
見知らぬ女の子にメールを打っていた。こんなの生まれてはじめてだったね。いや、正
直ちょっとおもしろかったけど。個人的には彼女に対しての想いが1%もないので、もの
すごく普通に誘っちゃった感じの文面を作る。なぜなら、断られても僕はまるで痛くない
ので。他人事って素敵。ギンさんはそれを自分の言葉に直して、ひとりでやたら思い詰
めたあげく、彼女の存在する場所へ向けてメールを空へ解き放った。

「ああ、もう5分経ったよ」
「いや、ギンさん。まだ5分っす」
「ほら、もう10分経った!」
「ほらって言われても」
「まだ彼女見てないかもしれないし」
「そうそう」
「きっとね」
「たぶんね‥‥」
「もう15分だよ!」
「ものすごく希望的な観測で言えば、いま彼女はメールを打ってる」
「それ以前に、ギンさん時間気にしすぎ」

 5分刻みでリアクションを見せるギンさんのもとへ、20分後、彼女からのメールが届
く。それはなかなか好意的なリアクションで、「一緒に行きたいです。ギンさんはいつ
行く予定ですか?」的なコメント付きだった。いつの間にかカウセリングチームは増員
していて、「おおっ~!」とか妙に沸き立つ一同。すかさず「第二の矢を放て」と命令す
る一同。ギンさんはまた僕に書かせようとしたが、「ここからは自分でなんとかしたま
え」と却下する。思い悩むギンさん。ようやく第二の矢を発射する。その文面を見せて
もらったところ、自分のスケジュールばかりで、彼女の都合のいい日をまったく聞いて
いない始末。びっくりしたね。普通、「じゃあ都合のいい日教えて」とか聞いて相手に
合わせるところじゃないの? 「なにやってんだよ」、「がっかりだね」、「台無しだよ!」
と憤慨するカウセリングチーム。納得のいかないカウセリングチームは「すかさず第三
の矢を放って、続きメール的な風味にして彼女の予定を聞け」と命令する。その文面を
作りはじめたところで、狙い済ましたようにギンさんの携帯の電池が切れる。‥‥マジ
で? いや、さっきから電池切れそうって言ってたけど、ここで切れるんだ。まいったね、
ギンさん。ある意味天才。

 時刻は深夜12時を過ぎ、酒が入って眠くなった僕はタクシーで帰宅する。途方に暮れ
るギンさんに、「とりあえずコンビニで電池買ってください」と言い残して。今日、ギンさん
から送られたきたメールによれば、そのあとなぜかゲイバーへ行って乱闘があったりし
たらしい。えっ、どういう展開なの? おもしろそうだけど帰ってよかった。彼女の件に関
しては、だいぶ時間が過ぎてからさらにメールを送ったとのこと。まだはっきりしないが、
それなりに名のある劇団なので先にチケットを取っておくことにしたらしい。そして、彼女
にふられた場合は、もちろん僕が責任を取ってギンさんと一緒に観にいくことになってい
るらしい。

 そいつは初耳。


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