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1 post from December 2005

December 11, 2005

あとになってみなければ、わからないこと


 駅へ向かう地下道には、はやくも年末の気配が漂っているように思えた。街はイル
ミネーションによって飾られ、華やかなクリスマスを演出しつつある。緑と赤。恋人た
ち。12月だ。クリスマスというのは不思議なもので、相手のいないときのほうがその
特別な気分を実感させられる。自分に相手がいるときには、いつもの関係の延長で
しかない日だったりもするんだけど。この12月に恋人たちはプレゼントを交換したり、
愛を囁いたり、どこかの宿泊施設で、あるいは誰かの部屋で一緒に朝を迎えたりす
るんだろう。素敵だ。何年か前には僕にもそんなことがあったような気がするが、い
まいち詳細を思い出せない。その程度の記憶ということなのか。世の中には残るも
のと残らないものがある。そういうことだ。

 不在の季節。おそらく今の僕には、地上に生きるべき生命体として何かが欠けて
いる。それは肌触りなのかもしれないし、情熱なのかもしれない。この季節になると、
「俺はクリスチャンじゃないし」とか「企業が商品を売るための戦略だ」などと言い出
す方々がいるが、個人的には相手がいるのであればイベントはイベントとして楽しん
でしまえばいいのだと思っている。それでささやかな幸せが得られるのなら。いつも
よりちょっとだけ悪くない日が過ごせるのであれば。音楽が流れているのなら、身を
任せろということだ。冷静になって音楽を止める必要なんてないわけだし。

 高速道路から君に電話かける
 じゃあまたね またすぐかけるよ
 白い月に 今夜の夢重ねて
 そして車は走る 真っ暗な中

 真夜中のころ、ふたりの恋
 真夜中のころ、ふたりの恋
 
 ちなみに僕が今まで貰ったプレゼントでいちばん嬉しかったのはブックカバーだった
りする。クリスマスに貰ったのかどうかは定かではない。なにしろもう10年くらい前の
話だ。青い革のブックカバー。時とともに変色し、今ではすっかりボロくなっているが、
そのぶん本によく馴染むようになった。僕にブックカバーをくれたのは友人の彼女だっ
た。今まででいちばん嬉しかったのが、友人の彼女から貰った物というのもどうかとい
う気がするけど、僕はこのブックカバーがひどく気に入っている。彼女とはそれほど親
しいわけでもなくて、なんだか唐突に貰ったような感じだった。ちょっとしたサプライズ。
やはりプレゼントにはいくらかの驚きが必要なのかもしれない。たぶん、彼女は僕に
ブックカバーをくれたことをもう覚えていない。場合によっては、彼女と街ですれ違って
もわからないかもしれない。僕はそんな彼女から貰ったプレゼントを10年近く使ってい
るわけだ。きっと、僕はこれからも青い革のブックカバーを使い続ける。そして、このブ
ックカバーがあるかぎり、ときどき彼女を思い出すんだろう。日々の静かな時間のなか
で。たいして親しくもなかった彼女のことを。

 今日は街に雪が降った。
 もう一度言おう、12月だ。


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