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1 post from February 2006

February 06, 2006

オシムに学ぶ

 「レーニンは、『勉強して、勉強して、勉強しろ』と言った。私は選手に『走って、
 走って、走れ』と言っている」
                          ――イビツァ・オシム

 そんなわけで『書こう』と思った。僕はサッカー選手じゃないけど、おそらくオシ
ムが言うことを僕に当てはめると、それは『書く』ということだと思われたので。と
りあえずパソコンと向き合ってみる。ものを書くという行為には集中力が必要だ。
とくに脚本の場合。このブログの場合はまったく集中力はいらないんだけど。音
楽を聴きながら、ついでにぺプシとか飲みながらでも余裕だけど。なぜならここ
はつまらなくても、とくに問題もないので。見てくれた人が損するだけなので。お
気の毒。どうもすみません。ワンクリックで移動できる世界って便利だね。

 パソコンに向かって、とりあえずシーンを思い浮かべてみるわけですよ。こんな
感じなんだろうなと。こういう空気で、この人はこんな気分なんだろうなと。そうす
ると勝手に台詞が出てくるので、ババッと喋らせてみるわけです、その人たちに。
で、そのあとに「この台詞いらねえな」とか「ここはリズムがいまいちだな」とか直
すわけです。そんなふうに直しながら、何ページか書くたびに読み返してみる。
そうするとね、もう「死ね!」とか思うわけですよ。何回も何回も同じところ読んで
るから、おもしろいのかどうか自分でわからなくなるわけです。自分の好きな映画
でも、冒頭から10分くらいを50回くらい連続してみたら、たぶんみなさんもうんざり
するでしょう? わかりやすく『マトリックス』に例えるなら、ずっとトリニティばっか
り戦ってる感じなわけですよ。「いつになったらネオが出てくんだよ」と。たぶん、
それと同じです。これは、かなりうんざりする。

 それでも先に進まなきゃならないので、ついでに言えば自分でもその先が見て
みたいので、がんばって書くわけです。ここで僕は新たな問題に直面します。ちょ
いとここで笑いを取りたいなとか、あるいはここでちょっと人々の心を動かしたいな
とか思ってみるわけです。狙った台詞というのはハマれば威力を発揮するけど、
外すとかなり痛い目に遭います。おそらく外したときは、書いてる僕がいちばん痛
いです。そいつはかなりのダメージです。そこで僕は迷う。「いや、ここはあっさり
やったほうがいいのではないか」と。これはサッカーでいうところの1対1に似てい
る。そこで勝負して勝てば大きなチャンスになるけど、ボールを敵に奪われた場合
はいきなりピンチになるという。オシムはサッカーにおいて「リスクを冒せ」と言って
いる。だから僕もリスクを冒して勝負するべきなのかもしれない。でも、僕は物語
におけるリスクを知っている。映画や演劇において、「うわっ、やっちゃったよ」的な
シーンを目にしたことがある。それをやられたばっかりに、急に醒めていく自分を
経験したことがある。ものを書く者としてあれだけは避けたい。そうしたシーンはた
いてい、書く者のセンスを問われるので。どうする? そんなとき、僕はたいてい
バックパスを選ぶ(あっ、逃げた)。いや、無茶な勝負をするよりも、シンプルなプレ
ーこそが効果的な場合も多々あるし。

 良いサッカーチームというものは、勝ちパターンを持ってます。このパターンに持
ち込めば勝てるという自信を持っている。脚本を書くという作業において、僕もそれ
が欲しいなあと。わかりやすく漫画家に例えるなら、あだち充。彼は疑いようもなく
勝ちパターンを知ってます。キャラクターが誰だろうと、同じパターンで勝ちにいく。
ある意味では力技、羨ましい。かつてうちのクレイジーな父は、まだ若かりし僕に
対して、「最も安易に物語を展開させる方法は、冒頭か中盤で人を死なせることだ」
と言ってました。どちらかと言えば「それはやるな」的なニュアンスでしたが、父が
書いたものを見てみたところ思いっきり人が死んでました。それから僕がもの書き
になろうと思って相談に行ったときには、こうも言いました。「最初のシーンで雨を
降らせるのはやめろ」と。それがものを書くうえで、なんの助言にもなっていないこ
とは言うまでもなく。

 本気でものを創るってのは難しいなあと。たぶん、これは脚本だけでなく、音楽
でもデザインでも同じなんだろうけど。でもやっぱり無難なものを狙っても仕方ない
ので、どこかでリスクを冒さなければいいものはできないんだろう。問題は、どこで
リスクを冒すかということだ。勝負どころを見極めること。シンプルにすべきところは
シンプルにやって、勝負するところは勝負してみる。うん、このへんは経験なんだと
思われます。なので、「書いて、書いて、書け」というわけだ。ではでは、最後はオ
シムのコメントで締めましょう。

「守るのは簡単ですよ。作り上げることより崩すことは簡単なんです。家を建てるの
は難しいが、崩すのは一瞬。サッカーもそうでしょう。攻撃的ないいサッカーをしよう
とする。それはいい家を建てる意味。ただ、それを壊すのは簡単です。戦術的なファ
ウルをしたり、引いて守ったりして、相手のいいプレーをぶち壊せばいい。作り上げ
る、つまり攻めることは難しい。でもね、作り上げるほうがいい人生でしょう? そう
は思いませんか?」

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