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1 post from October 2006

October 03, 2006

斜陽


 脳のピークは23歳くらいであるという話を聞いた。それが本当のことであるな
らば、僕の脳のピークは10年前に過ぎ去ったことになる。脳のピークが過ぎて、
夏が去って、今年も10月を迎えた。そして僕は、井上陽水を聴いていたりする。
夢はつまり、想い出のあとさき。そうやって人は、未来とか希望よりも、過ぎて
いった記憶ばかりを抱えて生きていくことになるんだろう。そもそも人ってのは、
蓄積されていく生き物だ。だから、途方もない夢を見るよりも、目に見える現実
を受け入れようとするのかもしれない。それはそれで明らかに正しいことである
し、絶望的なくらいに閉ざされた思考でもある。そんなこんなで、年を重ねるた
びに閉ざされていこうとする扉を意識的にこじ開けながら、僕は今日も生きてい
るというわけだ。

 今日は仕事が早上がりで、時間に余裕があったのでお気に入りの蕎麦屋へ
行った。季節は秋で、鴨せいろにはちょうど良い時期だと思われた。相変わら
ず旨かった。食べ終わる頃には蕎麦湯が用意され、さらにそのあとには蕎麦
茶が出てくる。店内は当然のように和の佇まい。こういうのってひどく和むよな
あ、と思いながらひとりで煙草を吸う。合法ドラッグ。これに関しては誰も僕を
止められない。なぜなら中毒だから。ふたつ隣の席の老人が熱燗を頼んでい
た。こういうときには酒が呑めたらいいなと思う。世の中の女の子たちはよく、
世の中の男たちを総括して、自分に付き合ってくれる程度に酒が呑めればい
いと言う。が、僕はそれすらできない。途中で熟睡してもいいなら話は別だった
が。仕方ないので適度に想像をした。恋人と向き合って座り、彼女は食後に日
本酒やらなんやらを呑んで、僕は煙草を片手に蕎麦茶を飲む。時間はゆっくり
と心地よく流れる。指先のけむり越しに耳を傾ければ、彼女は今日起こった出
来事を僕に話して聞かせてくれる。理想的だ。が、こいつは明らかに想像だっ
た。蕎麦屋で井上陽水バージョンの「ワインレッドの心」を聴いていたのが原因
だったのかもしれない。

 今以上 それ以上 愛されるまで
 あなたのその透き通った瞳の中に
 あの消えそうに燃えそうなワインレッドの
 心を写しだしてみせてよ ゆれながら

 そして、最近思うことは、年を重ねるのは難しいなということ。僕は服装にうる
さいタイプではないが、年齢によって、服装にも似合ったり似合わなかったりす
ることがあるのは知っている。自分では気付かないうちにズレはじめていること
もあるんだろう。それと同じで、肉体とメンタルにもフィットするしないのがあるの
かなと。年相応の心持ちを身につけようとしすぎれば、やたら老け込みそうな気
もするし、変わらずにずっと行こうとすれば、知らないうちに肉体とメンタルのバ
ランスにズレが生じるような気もする。時代がどう流れようと僕のやるべきこと
は同じで、結局のところ、僕は変わりたくないという結論に達しているわけなん
だけど。

 夏まつり 宵かがり
 胸のたかなりにあわせて
 八月は夢花火 私の心は夏模様


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