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December 09, 2006

魚群探知機は夢見る


 夢は見るか。

 僕はいまだに夢を見る。新宿の街なかで。音楽を聴きながら、現実から離れて。
いつかたどり着けるかもしれない風景を夢見る。目に映る現実世界では夜の高層
ビルが舗道を見下ろし、冬の装いをした人々が駅へ駅へと歩いていく。街灯から
漏れる薄明かり。マフラーにコート。いくつもの白い吐息。僕も同じように駅へ向か
って歩く。それでも心は別の場所に向かっている。何年か先の景色を思い描いて
いる。


 夢は見るか。

 すっかり見慣れた日常のなかで。変わらない毎日のなかで。社会人であることと、
家庭を持つという責任のなかで。人は想像する生きもので、それは誰にも止められ
ない。違う場所に立っている自分の姿が思い浮かぶのなら、それは動きたがって
いるということだ。仕方がないと思うこともできるし、そこから歩もうと思うこともでき
る。そんなとき、僕ははじめる。いくらかの恐れを抱きながらはじめる。自分の能力
では通用しないのではないかと思いながらもはじめる。そうしないことには、何もは
じまらないことを知っている。


 夢は見るか。

 あなたの街の片隅で。イルミネーションと高層ビルのなかで。自然に囲まれた景
色のなかで。電車を待つ駅のホームで。車のなかで。カフェのテーブルで。職場の
ブースで。ひとりきりの部屋で。大勢の友人たちや知人たちのなかで。恋人と過ご
す時間のなかで。家族を待っている家で、待っている人がいる帰り道で。多くの冴
えない気分の朝と、ときどき訪れる悪くない朝のなかで。その日最初のドアを開け
た、あまりにも小さな世界の果てで。


 夢は、見るか。


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