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January 30, 2008

書き続けるということ

 

 それは結局のところ、脚本的なリハビリなのだろうなと思った。

 脚本講座に通いはじめてから、「なんだかこの感じが懐かしいな」と思うことがよくある。なにしろ毎週課題が出るので、一週間のあいだ脚本のことを考えない日がほとんどない。職場での休憩時間にノートを開き、おそろしく汚い字でアウトラインを作り、とりあえずそこに入れたい台詞を書きつけ、枚数制限の中で収まるように構成を考える。耳元で流れる音楽はほとんど聞こえていない。そこにあるのは実在しない人物の言葉と行動だけだ。こういうふうに没頭している瞬間というのは懐かしくもあり、楽しくもある時間だといえる。

 講座にはとりあえず「脚本ってどんなものだろう」と通いはじめてみた人から、プロ化を目指している人までさまざまな顔ぶれがいる。とりあえずの方々は姿を見せなくなったり、出席しても課題に追いつかなくなってきているようだ。それはそうだろう、忙しく働いていたら毎週の課題はけっこうきつい。僕でさえぎりぎりなくらいだから。枚数的にはそれほど多くないが、毎週テーマが決まっているので、なんでも自由に書いていいというわけでもない。

 僕にとってはそれがけっこうおもしろい。自分だけだったらまず書かないだろういうテーマが出るし、物語を構成する上で欠かせない要素を毎回メインにして書かせることで筆力を上げさせるという狙いだと思われた。言われなくても知ってることから、「なるほどね」と思えることもあり、現時点では講座に通っていることが明らかにプラスになっているようだ。

 先日はいきなり、その場で数枚のシナリオを書いてくださいと言われ、手書きが嫌いな僕はかなりつらかった。与えられた時間の中でみんな同じテーマで書き、終わった人から帰れるという仕組み。時間ぎりぎりまで書く人がいれば、早々と書き上げていく人もいた。僕は残り20分くらいまで時間を使って書いたけど、それでも早い方だった。正直、やっつけだった感は否めない。

 翌週、それをひとりひとり音読し、挙手で誰が1位か決めるなどという簡易コンクール的な展開になった。はっきり言って、それを知っていたら僕は休んでいた恐れさえある。人前でしかも自分が書いた脚本を読むなんて自殺行為だ。狂ってる。ついでに言えばテーマは恋愛的なもので、さらに言わせてもらえば手書きなので構成の直しが面倒すぎて――久しぶりに消しゴムの存在を思い出した――仕方なく出した脚本だった。まあ、それはほかの人も同じだったんだろうけど。人前で自分が書いた恋愛的な台詞を読むところを想像してみてください。信じられますか?(ヴォネガット風)

 結果はかなり意外にも、20人くらいの人数の中で僕が小差で1位だった。誰も手を挙げなくても仕方ないくらいのデキだったのに。「えっ、こんなので?」と内心思ったが、冷静に考えれば周りには初心者も多かったんだろう。僕個人の感覚では及第点と思えるものを書いていた人は4人くらいしかいなかった。あとは声の大きさや音読の巧さもある。感情を入れて読んでいる人がいれば、緊張してうまく読めていない人もいた。うまく読めなかった人の中にもそれなりに悪くないものを書いていたり、時間を与えればもっといいものが書ける人もいたのかもしれない。そして、僕が思い切り棒読みだったのは言うまでもなく。声を張りたくもないのでマイクの目の前でぼそぼそと読んでいたという噂。いま思い出すと、僕に一票を入れた方々は前の方の席に座っていた人が多かった気さえする。

 僕自身が一票を入れた脚本には、ほかに誰も手を挙げていなかった。好みの問題なのかもしれない。その人が台詞を読むのを聞いていて、ひとつだけ「あっ、この台詞はあの時間の中で俺には思いつかないな」という台詞があった。だから一票というわけだったんだけど、そういう意味でもやっぱり台詞って重要だなと思ってみたしだい。

 なんというかまあ、やっぱり脚本を書くのっておもしろいよね。
 そんなわけで、僕はまだ書いています。

 

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